『BS世界のドキュメンタリー<シリーズ世界に生きる子供たち>「コーランが大好き」
』「エジプト政府が主催し、毎年カイロで開かれる国際コーラン朗誦選手権。2010年の大会には世界70か国から110人の精鋭が集結した。選手の大半は10代後半から20代前半だが、この年は、タジキスタン、モルティブ、セネガルの3か国から、10歳の少年と少女が代表として参加した。コーランは600ページ、114章にも及ぶ膨大なアラビア語で書かれた聖典だ。非アラビア語圏に住む彼らは、耳で聞いた発音やリズム、節回しを、ひたすら暗記して大会にやって来た。審査風景はまるでイスラム世界の “アメリカン・アイドル”のようでもあり、会場には常に笑いと涙が錯綜する。」
毎年、エジプトで国際朗誦協議会が開催される。 イスラム教の聖典、 「コーラン 」の暗記力と表現力を競う、最も権威あるコンテストである。 出場者の多くは、世界各国から集まった子供たち。 非アラブ諸国の選手は、アラビア語も分らぬまま、 「コーラン」 を丸暗記している。
ナビオラー(10歳・タジキスタン代表)
ジャミール(10歳・セネガル代表)
「初めは、無理だと思ったけど、今では全部覚えています。 コーランの勉強が何より先と両親に言われました。 イスラム教徒は、コーランを学ばなければいけません。 僕は、その文字や書き方、先生の教え方も好きです。」
リフダー(10歳・モルディブ代表)は、セスナ機でエジプト入りした。
彼らは、大勢の候補者の中から選ばれた。
世界70ヵ国、110名の代表が、エジプトのカイロで一堂に会する。 エジプト宗教省が主催で旅の手配もしてくれる。 副大臣のサレム・アブデル・ガリル博士は、国内10万箇所のモスクを監督している、エジプトを代表する、イスラム穏健派だ。 「コーランは、完全に暗記できる唯一の書物です。 子供たちでも全部、諳んじることができるのは、正に奇跡と言えます。 中には、意味をわかっていない子だっているんです。 最後の審判の日、私たちの天国における地位は、コーランをどれだけ暗記したかによって決まります。」
タジキスタンから来た、ナビオラにとって、カイロは、大都会だ。 予選は、3日3晩続く。 初め て「コーラン」 が、授けられた 「ラマダン」 の月の最も神聖なる夜に、入賞者は、大統領から祝福を受けることになる。 出場者の多くは、10代後半~20代前半だが、中には、7~10才の幼い選手もいる。
審査基準は、
①出場者が、ミスに気づき、訂正した場合、-0.5ポイント。
②審査員に指摘され、やりなおしたら、-1ポイント。
③3回間違えると、その問題は失格。
選手たちは、PC画面のタッチパネルで、問題を選ぶ 。「コーランは、凡そ600ページ、114章あって、1章が3節と短いものから、286節に及ぶ長いものもあります。 子供たちは、非常に内容の濃い経典を暗記しなければならないのです。 コンテストでは、言葉の暗記に加えて 、「タジュート」 も審査されます。 「タジュートの法則」 とは、音節のリズムや様々な発声法、声を胸から出すか、喉から出すかなど、細かく決められています。」
協議会は、日没の食事の後、夜の9時半に再開され、夜中の3時まで続く。 リフダー(10歳・モルディブ代表)は、すっかり寝ぼけていた。 リフダーは、学校成績はとても優秀で、特に理科と算数が得意。 将来の夢は、探検家だ。 真っ暗な夜の海を探検して夜行性の魚の生態を調べたいと思っている、ちょっと風変わりな女の子だ。 リフダーの点数は、97点で、これまでの最高点だった。 コーランは、ムハンマドの妻の朗誦により民に伝えられたのだという。
ジャミール(10歳・セネガル代表)は、ミスを審査員に指摘されたが、アラビア語が分らず、涙をポロポロと流してしまった。 不憫に思った審判団は、彼に、カイロ最大級のモスクで朗誦を務める名誉を与えた。 ジャミールの朗誦を、皆が、形態電話で録音し、彼は、皆からキスの祝福を受けていた。
外国から来た選手たちは、決勝戦があることを知らず、2日間、ラクダに乗ってピラミッドを観光した。
決勝へは、110名のうち、12名が進んだ。 その模様は、国営テレビで生中継される。
ナビオラー(10歳・タジキスタン代表)の番が来た。 ガリル博士が 、「君は、アラビア語が分らないだろうけど、今からルールの確認をします。」 と言い、そして 、「神に選ばれし声だ!この少年を迎えることができて、神を賛美せずにはいられません。 皆さんにも祝福がありますように・・。 見事な発音でした!」 と絶賛した。 ガリル博士は、リフダー(10歳・モルディブ代表)に、自信を持たせ勇気づけるために、笑顔を絶やさないようにしていた。
結果は、
優勝・・・アヴドゥラー(17歳・エジプト代表)
2位・・・リフダー(10歳・モルディブ代表)
3位・・・ナビオラー(10歳・タジキスタン代表)、だった。
アヴドゥラーは、こう言っていた。 「僕は、ナビオラー君が良かったと思いました。 接戦だったはずです。 天使のように清らかで小鳥が歌ってるみたいでした。」
授賞式で、ナビオラーは、大統領の前で、ただ一人、「コーラン」を朗誦した。 実は、カイロに来る直前に、タジキスタン政府が、ナビオラーが通う学校を閉鎖していた。 その学校は、コーランのみを教え、母国語であるタジク語の読み書きすら教えていなかった。 ナビオラーは、首都にある政府公認の学校に転校し、どの学科でも優秀な成績をあげている。
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