『旅のチカラ 「幸せの国で、聖なる踊りを USA(EXILE) ブータン王国 』「人気絶頂のグループ、EXILE。斬新なパフォーマンスで異彩を放つUSA(ウサ)が、今回の旅人。ステージの輝きとは対照的に、未来への不安で眠れず、「幸せとは何か」を自問する毎日。USAが旅するのは、幸せの国として知られるブータン王国。東部の小さな村で農家に泊まり、チャムと呼ばれる神聖な踊りに挑む。USAほどの実力を持ってもなかなか習得できないが、温かい村人たちに励まされ、本番の舞台に立つ。」
EXILE/USA/宇佐美吉啓。 「夢を叶えることだけが幸せなんじゃない。やべぇ、踊れなくなったら、何にもなくなる。」 ブータンは、物質的な豊かさだけが幸せではないという考えのもとに、 「国民総生産」 ならぬ 「国民総幸福」 の高さを目指している。 この国で、祈りのダンスを習うことで、USAの中の空欄を埋められる隠されたヒントに出会えるような気がした。
ブータンは、敬虔な仏教国。 仏への祈りが最も大切な日常だ。 「カンルン仏教学校」 の最高責任者であらせられる、カルマ・ランデン卿に謁見した。
「ブータンの仏教をどれくらい知っていますか? 仏教というのは、人々の心を平和にしたり、幸せにする薬ではないかと思います。 仏教の考えでは、チャムを踊ることは、心を磨くことです。 高く飛ぶとか、きれいに踊るとか、技術的なことは問題ではありません。 この踊りは、祈りなのですから。 ・・・何か悩んでいることはありますか?」 「何だろう。自分では、夢を叶えても、叶えても、もっとやらなきゃっていう使命感みたいなのもあるし、将来これが、いつまで続けられるんだろうという不安もあります。」
「季節に例えると今は冬でしょうが、いずれ暖かくなると必ず来ます。 全てのものは変化します。 永遠に続くものは一つもありません。 ブータンは、豊かな国ではありませんが、今日、食べる分があれば明日の心配をしないで、私たちは幸せを感じているんです。この国でゆっくり学んでいってください。」
チャムを学ぶのは、ここから40km離れた村。 ホテルはない。 泊めていただくのは、踊りを指南していただくタシ・ウォンディ先生の家だ。 村には、電気はきているが暖房はない。 家族や親類やご近所が集まって、一緒に食事をする。 このひと時が最も幸せだという。 「僕は、5万人とかの前で踊って、ワーっと言われたと思ったら、家に帰れば独りでいるのが寂しい。」
翌朝、思いもよらぬ絶景がUSAを迎えてくれた。 「ラ・ディ村」 は、300人ほどの村。 外国人が、チャムを習いに来たのは初めて。 「第一号!嬉しい!」
シャザム・チャム(鹿神の舞)は、グル・リンポチェが、鹿の神に姿を変えて、悪霊を退治する舞で、30分間も休みなしで続く。 練習1日目、ステップが覚えきれない。USAほどのダンサーがパニックに落ちていた。 「頑張ったね、までにはなるかもしれないけど、人々を喜ばすまでにはいかない。」 「ジャン・ジャン、リリリリ~ン! これを覚えるしかない。 解る。 ダンスってそうなんだよ。 感覚なんだよな。」
USAは、子供の頃は、喘息で苦しんでいた。 「治ってほしい」 と、心の底から祈ったそうだ。 中学生になると、拳法などで身体を鍛えた。「大好きなことを夢中でやっていれば、自分の苦手なことも、弱い部分も克服できると確信しちゃって・・・」 高校生になると、ダンスに嵌りプロのダンサーを目指した。 EXILEに入ることができ、USAの夢は叶った。 成功の影には、 「USAの未来予想図」 があった。
18才・・・NYに行きたい。○ BABYNAILに入りたい。○
19才・・・Bobyさんと組む。○
21才・・・ダンサー界での地位がほしい(JSBに入る)○
22才・・・バックダンサーではなく、アーテイストになりたい。○
24才・・・ダンス以外でも得技がほしい。○
24才・・・ダンスで一番になりたい。○
武道館クラス-J・soul Brother
感性+めだちたがり→ダンサー
ダンス+( )→アーチスト
実現が困難だと思われた目標を次々とクリア。 今では、数万人の観客をそのパフォーマンスで魅了している。 欲しかったものは、全部、手に入れている気がする。 でもまだ、書き込めていないものがある。 「幸せとは何か?」 その空欄がある。
練習2日目、仲間の一人に言われる。 「USAさんは、ダンスの能力が高いけれど、この踊りは技術だけではありません。 あなたに足りないのは祈りです。」 すっかり落ちこんでいるUSAに、タシ先生が見せたいものがあると言った。 2kmほど離れた高台に、ダルシン(祈願旗)が、沢山、はためいていた。 今日は、東日本大震災の犠牲者のためのダルシンと、15年前に亡くなったタシ先生の前妻のためのダルシンを掲げる。 タシ先生は、妻を亡くし苦しんでいた時に、偉いお坊様から、チャムを踊るようにと勧められたのだそうだ。 「チャムを踊ることで仏様に見守られている感じがします。」 「悲しみを喜びに変える踊りなんですね。」
練習3日目、USAは、 「普通のエンターティメントとは違うから、神ごとの舞台には上がれない。」 と、タシ先生伝えた。 タシ先生は、きっぱりと、 「明日は、絶対に踊ります。 今日は、練習を続けます。」 と仰った。 USAは、考えた。 「みんなの喜んでいる顔がみたいし、明日、俺が思いっきり踊ることが、きっと感謝の気持ちに変わる。 恩返しになったらなぁと思う。」
本番当日。 祭りは、朝4時の読経から始まる。 「仮面を被った瞬間から、自分は人間ではなく、神そのものだと考えなければいけない。 あなたが人間のままだと、ご利益がありません。 見ている人全員を平和に導いていけるように踊ってください。」 「今回、皆さんに教えて頂いた大切なことを胸に、僕はまだ未熟ですけれども、精一杯、皆さんに喜んでもらえるように、そして、祈りを踊りに変えられるように、心を込めて踊りたいと思います。」
鹿神の仮面を被った瞬間に神となったUSAは、大きく首を回し、村人たちに災いをもたらす悪霊を探す。 踊りを教えてくれたタシ先生、最後まで励まし続けてくれた仲間たちとステップをあわせる。 「ブータンの人々はなぜ幸せなのか?」 その答えを見つけるために遠くからやってきたUSA。 人々の平和を祈って踊るチャムに、その答えが隠されていた。
USAは今、自分を温かく迎えてくれた村人たちのために、剣を振るう。 「災いよ!消えろ!」 30分に及ぶ、祈りのダンスが終わり、USAは、汗びっしょりで椅子に座り込んだ。 無心で踊り何も覚えていない。 「思わず泣きそうになりました。 本当に感動した。(カルマ・ランデン卿)」
「USAさんが頑張ったから、こんなに人が集まったんだよ。」 USAは、溢れる涙がとまらない。 「やべぇ、涙が出てくるなんて思いもしなかった。」
カーテンコールが鳴り止まない。 「素晴らしかったです。 皆、USAさんに釘付けでした。 彼の踊りには、ご利益があります。」
「祈りのダンスをやったのは、僕の人生を大きく変えると思うし、全てが、この喜びを得るための試練だったんだ。 俺の心の中は、幸せで満たされている。 それが、この瞬間だけじゃなくて、勿論、日本に帰れば色んな葛藤があるだろうし、苦しんだり、悩んだり、悲しいこともあると思うけど、それは、ブータンの人にも無いわけじゃない。 それを如何に変えていくか、その思いをもっと自分の踊りに込めて、一人でも多くの人に伝えていきたいし、伝えられる人になりたい。」
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「衣食足りて礼節を知る」 とはいうものの、物に溢れている国の人々は、必要以上の「欲」 物欲、名誉欲などに、振り回されて、奪い合って、疲れきっているんじゃないだろうか。 そして、自分さえ良ければいいという人が多すぎるのだと思います。 皆のことを祈り踊るチャム。 「幸福」 とは、心が穏やかだということかもしれません。 ブータンへは、政府公認のガイドをつけなければ入国できません。 また、ブータン国王は、世界遺産になって外資を得るよりも、自給自足率を守ることを選ばれたそうです。
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